【頂戴したコメントを踏まえ、2007.1.21 11:00に修正しました】前回紹介したセゾン投信、注目度が高いようですね。
セゾン投信の詳細が明らかになるのは2月下旬なので、ファンドの組み入れ比率など分からないことも多いのですが、現在のところ、0.7%というセゾン投信の信託報酬が、組み入れファンドのコストを含むのか、含まないのかという点に関心が集まっているようです。
一般的には、組み入れファンドのコストを含めて信託報酬が0.7%なら魅力的ではないかという見方が強いようですが、果たしてそうでしょうか。私は、仮に組み入れファンドのコストが全部コミコミで0.7%だったとしても、セゾン投信は魅力的でないと考えます(0.7%の信託報酬が組み入れファンドのコストを含まない場合については
前回記事参照。)
具体的には、こういうことです。
さわかみファンドの信託報酬が1%
バンガードの信託報酬が平均0.3%
とした場合、10万円の投資資金をさわかみファンドとバンガードに半分ずつ投資したら、投資資金全体で負担する信託報酬は
(5万円×1%+5万円×0.3%)/10万円=0.65
となります。
現段階ではセゾン投信の組み入れ比率が分かりませんが、セゾン投信の信託報酬は、セゾン投信の組み入れファンドの信託報酬より高くなることは明らかです。なぜなら、加重平均した信託報酬とセゾン投信の信託報酬の差がセゾン投信の利益となるからです。
それが0.1%なのか、0.05%なのかは分かりませんが、それがムダなコストであることに変わりはないと思います。
また、セゾン投信は、月々5000円から定期積立ができるようです。これを評価している人が多いけど、私の評価はむしろ逆で、これがセゾン投信の「儲けのカラクリ」ではないかと思っています。
上述したように、FOFの信託報酬は、その商品の性質上、組み入れファンドのコストの加重平均より高くなります。だから、十分な投資資金があり、かつ、各組み入れファンドに直接投資できる環境にあれば、セゾン投信に直接投資するより、各組み入れファンドに直接投資した方が安上がりです。
では、もし十分な投資資金がなかったら?
投資信託を使った資産形成では、ドルコスト平均法を用いた継続投資が一般的です。
さわかみファンドもバンガードも定評のあるファンドですから、両方とも継続投資したいけど、それだけの資金的余裕がない、という人は少なくないはず。そういう人にとって、毎月たったの5000円で、さわかみファンドとバンガードの両方に投資できるセゾン投信はとても魅力的に映るのだろうと思います。
しかし。ちょっと考えてみてください。
ドルコスト平均法は、取得価額を平準化する効果があるだけで、特に有利でも不利でもない。だから、毎月両方に投資するだけの資金的余裕がないなら、交互に投資するとか、数ヶ月おきに投資するとか、投資方法を工夫すればいいんです。
「ドルコスト平均法で投資するために」ちょっと余計なコストを負担するのは、本末転倒だと思いませんか?
・・・・と、ここまで書くと、「おいおい、バンガードは日本で売られていないんだから、仮に十分な投資資金があったとしても、お前が言っているような投資方法は無理だよ」と指摘される方もいると思います。
そのとおり。実はここからが本題です。
バンガードは現在、一部の証券会社でわずかなファンドが販売されているだけなので、本格的に投資しようとすると海外口座を開設する必要があります。しかし、英語スキルや維持コストを考えると、海外口座が合理的な選択肢とならない人の方が多いはず。そういう方にとって、セゾン投信が次善の選択肢となり得るかもしれません。
しかし、です。
いま考えるべきは、「どうしてバンガードは個人投資家に直接販売しないのか、あるいは、個人投資家がバンガードに直接投資できるような販路を開拓しないのか」ではないでしょうか。
いろいろな困難があるのでしょうが、やはり米国の独立系投信会社であるフィデリティは日本で直販していますから、バンガードにできないはずはないと思うのですが。
もし、ノーロードでの直販が困難なら、若干の販売手数料が生じたって構いません。私は個人的に
さわかみファンドにはあまり投資したくないので、販売手数料が1%くらいだったら、ノーロードのセゾン投信ではなく、販売手数料を払ってでもバンガードのファンドに直接投資する方を選びます。同じように考える人は少なくないのではないでしょうか。
バンガードがセゾン投信で買えるようになるというのは、裏を返せば、少なくとも当面は、日本の投資家が直接バンガードに投資することはできないということ。
そんな訳で、今回のセゾン投信については、バンガードファンはむしろ怒ってもいいんじゃないかと思います。
ねえバンガードさん、他のFOFと提するより、個人投資家が直接購入できるようにするのが先じゃないですか?「セゾン投信なんていらない。」とはそういう意味です。
(追記)
「信託報酬にそんなに目くじらを立てる必要があるの?」という方に
→
「投資信託の信託報酬をシンプルに考える」(関連記事)
○梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー「SAISON CARDのセミナー『新春特別企画 「あなたを輝かせる投資スタイル」資産形成セミナー』レポート」○rennyの備忘録「バンガードの本気を感じました/セゾン投信」○投信で手堅くlay-up!「セゾン投信始動?」○ファンド戦記「未だ道は険しい・・」○NightWalker's Investment Blog「セゾン投信とバンガード」
TBありがとうございます。
私はどのような商品が出てくるのか詳細が判らない以上、判断できないですが、一つの商品とも限らないので、必ずしもバンガードとさわかみを一緒にしたものかどうかも・・?(セゾン投信のコンセプト的には、シンプルにこれ一つで日本も世界もOKと言いそうな気もしますが)
個人的には、何かと購入しづらいバンガードのファンドだけをまとめたものを、現在のマネックスやトヨタアセットより安く提供してもらえないかと期待しています(rennyさんが書かれていますが)
非常に冷静なご意見だと思います。
>半年でも1年でも、投資資金を貯めてから投資する方が合理的だと思わない?
継続投資が特に有利とは限らない、ということは分かります。しかし、一方で投資資金を貯めてから投資する方が合理的だという理由も無いですよね。「稲妻が輝く時」が予測できない以上、ボクは小額でも(その分いくらか余計なコストが掛かろうとも=もちろんそのコストが小額であるに越したことはありませんが)投資しておいた方が良いのでは、と思います。もちろん、貯めておいたがために、たまたま「稲妻の輝く時」に居合わせる幸運があることも認めますけど。
トラックバックありがとうございました。
そうですね。さわかみの組み入れには賛否両論あるようですね。
個人的には、
1.バンガードの個々のファンドを買える
2.バンガードファンド+インデックスファンド
3.バンガードファンド+さわかみ(今の形)
の順番で評価したいです。
今の形は3ですから、「まあ一歩前進かな」という感じです。
また、自分でアセットアロケーションを組める人にとっては、今回の投信のようなバランスファンドが必要になる機会はあまりないように思います。例えば、IVVのエクスペンスレシオは0.09%、1306の信託報酬は、0.1155%ですから。
このように、話題にすることと、評価することを、混同されて受け取られてしまったのが、ちょっと残念です…。
まあ、セゾン投信は、この投信のあとにも、追加で投信を出していくつもりのようですので、空色さんのお眼鏡にかなうような、良い投信が出てくるといいですね。
蛇足ですが、昔からのいち読者としての意見を。
文体をまろさんに似せるのは、やはりやめた方がいいと思います。
特に、批判記事の場合は、感じの悪さが目立って、たとえ正しいことを書いていても、ウソあるいは愚痴っぽく聞こえてしまって、もったいないですよ(^^;
セゾン投信の件、ほんとうにいろいろなところで盛り上がってますね。僕としては、(いい意味で)個人投資家の間で賛否が議論されるような投信が出てきたこと自体を評価したいと思います。
なにせ、今までは販売側が無理やり話題にする投信はあっても、個人投資家が話題にする投信なんてさわかみ投信くらいしかなかわったわけですから。いずれにしても選択肢が増えることが大切です。今後、同様の動きが出て競争が促進されることを期待しています。
空色さん
一般的な商品では、卸価格と小売価格は違うので、セゾンに対して信託報酬をディスカウントするのかなあと思っていました。
もしそうだとしたら、私のさわかみファンドとの付き合いも終わるかもしれません。
rennyさん
> 一方で投資資金を貯めてから投資する方が合理的だという理由も無いですよね。
この点については、感情論を抜きにすれば、確率論的にまたは統計的に積み立て投資の優位性が常にいえる状態でないと、つまり有利でも不利でもない状況では、積み立て投資は余分な手数料分だけ不利なので、「貯めてから投資する方が合理的」という考えはアリかと思っています。
ただし、お金には時間価値があるので、貯めた将来に投資するものを現在価値に割り引かなくてはなりませんね。期待リターンなどから割引率を設定して、割り引いた現在価値+手数料が将来の投資額よりも少なければ、積み立て投資が合理的といえるのでしょうかね。
こんな計算をする気はおきませんので、検証結果は不明です。(^^;
長文コメントでお邪魔しました。
Gabbianoさんのご指摘の通り、
>この点については、感情論を抜きにすれば、確率論的にまたは統計的に積み立て投資の優位性が常にいえる状態でないと、つまり有利でも不利でもない状況では、積み立て投資は余分な手数料分だけ不利なので、「貯めてから投資する方が合理的」という考えはアリかと思っています。
失礼しました、その通りですね。時間の経過による価値の減価を抜きにすれば「貯めてから投資する方が合理的」になりますね。。。
>じゅん@さん
個人的には、さわかみ投信とバンガードは抱き合わせじゃないかな~と思っています。さわかみファンド中心(バンガード抜き)で0.7%というのは、さわかみファンドがセゾン向けに大幅なディスカウントでもしない限り、コスト的に難しいのではないかと思うので。
>rennyさん
継続投資が有利でも不利でもない以上、継続投資のために余分なコストをかけるのは不利だと思います。もっとも、投資資金の捻出に1年以上もかかるようなら話は別かもしれませんが・・
(gabbianoさんと同じ意見です)
>水瀬さん
文体については、水瀬さんの御指摘のとおりと思ったので、表現ぶりを全面的に修正しました。たしかに、酔っぱらいがグチを言っているようで、あまり品が良くありませんでしたね。反省しています・・(^_^;)
言いにくいことを指摘してくださってありがとうございました。
なお、まろさんの名誉のために言っておくと、まろさんの真似は年末でやめたので、修正前の文章は私のオリジナル。文体の模索は続いています・・
今回の件については、私は、セゾンはよい仕事をしていると評価していますが、バンガードはついては、セゾンにファンドを提供するより、個人投資家が直接購入できるようにするのが先決だと思っているので、まったく評価していません。
また、水瀬さんがセゾン投信を取り上げたことは非常に大きな意義があったと思います。修正前の記事での私の批判は、誰か特定の人に向けたものではありません。
水瀬さんについて言えば、アクティブ投信であるさわかみファンドへの投資はどちらかといえば値が恥部であると理解していますし。
もし水瀬さんが、私は「水瀬さんがセゾン投信を高く評価している」と考えていると受け取られたなら、それは本意ではありません。
そういう誤解を招いたことも含めて考えると、やはり守勢前の文章が適切でなかったんだろうと思います。やや論点が飛んでいるような印象を受けたので、表現ぶりの修正と一緒に内容にも一部手を入れました。
>為成さん
仰るとおりですね。いままでの投信の多くは、「ダメ」と言う意見で一致するものが多かったですから(笑)
さわかみファンドもそうですが、私は、みんなが「よい」と言っている商品をみると、欠点を探したくなるんですよね。困った性格です・・
>gabbianoさん
そうなんですよ。
もし、さわかみファンドがセゾン向けに信託報酬をディスカウントするなら、さわかみファンドを直接購入する人はいなくなります。その方が損ですからね。
さわかみファンドをセゾン投信向けにディスカウントするなら直接購入する人はいなくなりますとありますが、機関投資家向けに同じファンドでも信託報酬をディスカウントするのは一般的に行われていることだと思います。
今まではありがとうファンドくらいしかさわかみファンドを組みいれていなかったので特に機関投資家向けファンドを作る必要性もなかったかもしれませんが、今後おらが街ファンドが続々登場してくる事を考えるとさわかみファンドも機関投資家向けファンドを始めるのかもしれませんね。
ええと、御指摘のコメントの趣旨は、セゾン投信の信託報酬0.7%が組入ファンドのコストを包含しているという前提で考えれば、さわかみ投信から信託報酬1%のファンドを購入するより、セゾン投信を購入した方が合理的ではないかということです。
まあ、バンガードには投資したくないとか、澤上さんの月次レポートが読めなくなる人はイヤだという投資家もいるでしょうから、「直接購入する人はいなくなる」はちょっと言い過ぎかもしれません。
m@さんだったらどうされますか?
文体、悩みすぎですよー。
いいじゃないですか、誰かにお金もらって書いてるんじゃないんだから(笑)
人の意見に振り回されちゃうのは、投資家としてもよくないじゃないですか。
私のブログは酔っ払いブログだったんだ!(爆笑)
どおりで酔っ払いに人気があるはずだ…。謎が解けましたよ。
私自身はお酒まったくダメなので詳しいことは分かりませんが、
お酒好きの事務所の所長が、飲み屋で宣伝してくれるおかげで、
夜の街で「あのブログの作者に会いたい!」と妙に人気らしいのです。
ちなみにこの記事の件、私も空色さんと同意見なので、
自分のブログで記事にする気力も起きませんでした。
うう、その一言が一番辛い・・(>_<)
まろさんのブログは毎回簡潔にまとめられていますが、私のブログは1つの記事が長いので、批判記事を口語調で長々と展開すると不愉快に思う人もいるかな~と思ったんです。
個人的に、いまの文体は私っぽくないと思っているので、文体の模索はまだまだ続きそうです・・
まろさんのところが「酔っぱらいブログ」だなんて言っていませんよ。
お酒を飲んで書いた記事があるのは知っていますけど(笑)
案の定、2chのセゾン投信スレでは、ボロカスに叩かれてますね。262から、一気に不満が爆発してます。
http://live25.2ch.net/test/read.cgi/market/1171697647/262-営業開始する前にここまで盛り下がる投信会社も珍しいでしょう。
あはは、たしかに叩かれてますね(^o^)
面白かったです。御紹介ありがとうございました。
私も直販を願う者です。信託報酬をわざわざ2回払う必要もないかと。
海外の運用会社曰く、直販できない理由は、日本の個人投資家のレベルが低いかららしいです。
海外の運用会社は日本に来たいけど、基準額に一喜一憂する個人投資家からお金を集めると、安定したキャッシュを持てないからだということです。長期運用というものが浸透するまで、解約率の低い日本の『受け皿会社』から資金調達するほうが無難だと考えたのでしょうか。
将来的には、セゾン以外からも資金を注入する窓口会社ができて、個人投資家のレベルが上がれば直販もありえるかもね。期待したいところです。
個人的には、日本の個人投資家が(他の欧米先進国と比較して)レベルが低いという見解に懐疑的です。そもそも、誰がどうやって比較したのでしょうか?
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投資信託 セゾン投信の購入検討
前々から投資信託の購入を考えていたのですが、下記の記事を読み購入に向けての行動を進めて行こうと決意しました。
20代のうちに始めて、...
[2009/09/27 18:32]
URL
Stay Hungry, Stay Foolish
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの信託報酬って・・・
以前にも興味津々の記事を書いた、セゾン投信のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンド。0.7%台という信託報酬は「絶対に安い!」とばかり思い込んでいたが、同ファンドの方針に少々批判的なご意見なども見つけた
[2007/07/22 15:25]
URL
経済や投資に関するなぐり書きメモ
後でじっくり、読みたいと思います。レバレッジ君私が子ども手当を支持しない2つの理由お邪魔します。
思うに子ども手当の根底にあるのは「子供達のためだから」という「主観的な善意の絶対化」ではないでしょうか。それは「女性のため」という「選択的夫婦ブロガー(志望)私が子ども手当を支持しない2つの理由私も子供手当は反対です。理由は、今は景気回復に全力を尽くすべきだから
です。子供手当の経済波及効果は極めて低いです。福祉をやってる場合か?
今がどんな時期なのかこなつホテル・ルワンダ>あつまろさん
コメントありがとうございます。
フツ族とツチ族って、統治しやすいようにベルギーが体型や鼻の高さなどを基準に無理矢理2つに分けただけで、実際に空色ホテル・ルワンダホテルルワンダ、私も印象に残っている映画です。
ツチ族とフツ族は以前から小競り合いはあったと思いますが、
旧宗主国のベルギーがツチ族を優遇したことで、憎悪がわきあつまろ