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山本七平「空気の研究」

以前から面白い本だと聞いていたので、先日、図書館で借りてきた。思っていたよりも古い本でびっくり。初版が1983年だから、もう25年以上も昔の本。
でも、内容は全然古くなかった。

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

文芸春秋 1983-01
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本書は、日本人の意思決定を拘束している「空気」とは何かを研究した本。
本書のテーマは以下の3つ。
○「空気」とは何か。空気はどのように発生し、どのように作用するのか。
○「空気」を崩壊させる「水=通常性」とは何か。
○どうして日本人は「空気」によって意思決定を拘束されているのか。

第一に、本書では、「空気」とは、一定の状況下で生じている精神的な空気・雰囲気であり、日本人は論理的思考や科学的データではなく「空気」に従って意思決定をしていると主張しています。
確かに、「あのときの『空気』ではああせざるを得なかった」「あの会議の『空気』ではそんなことはとても言い出せなかった」といった言葉に代表されるように、ある特定の状況下での「空気」のせいで、望ましい言動ができなかったり、望ましくない言動をしてしまったりする例はよく見られます。私は、それはごく当然のことだと考えていましたが、筆者によれば、それは明治以降の日本に特徴的に見られる傾向なのだそうです。
また、「空気」とは、特定の物事について、対立概念を用いて相対的に把握するのではなく、過度の感情移入によって絶対化する(筆者の言葉では「臨在感的に把握する」)ことによって発生するのだそうです。例えば、二国間の戦争において、両方の国それぞれについて善悪の要素を認めるのが相対的な把握であり、一方を善、一方を悪と決めつけてしまうのが臨在感的な把握ということです。
そして、いったん「空気」が発生してしまうと、特定の物事について論理的・相対的に考えることが困難となり、最終的に「空気」に沿った結論が導かれてしまうということです。

第二に、筆者は、物事の臨在感的な把握は日本の伝統に基づくものだとしつつ、明治より前の時代では「空気」に負けることを恥とする文化があり、「水を差す」ことによって「空気」を崩壊させるという対策を採っていたとしています。ここでいう「水」とは現実のことです。つまり、何らかの「空気」が生まれたときに、皆が忘れかけていた現実を思い出させることによって「空気」を崩壊させることが筆者の言う「水を差す」ということのようです。
他方で、筆者は、日本では、誰かが「水を差す」かどうかにかかわらず、毎日「雨」のように降り注ぎ、すべてのものを現実に即して変容させていくと主張しています。筆者によれば、仏教も、儒教も、共産主義も、長い年月の間に日本的な概念が多く取り入れられて、オリジナルとはかなり違ってきているとのことです。
そして、筆者のいう日本の「現実」とは、「父と子の騙し合いの社会」「情況倫理の働く社会」です。もう少し具体的に言えば、「父と子の騙し合いの社会」とは、本音と建前を分け、本音を口にすることをタブーとする社会、「情況倫理の働く社会」とは、情況に応じて価値判断が変わる社会、つまり「あの情況ではああせざるを得ない(だから我々に責任はない)」と考える社会」のことです。
つまり、「水を差す」ことによって「空気」を崩壊させることができるものの、そのときに差す「水」は「空気」の存在・支配を前提としているので一定の限界がある、ということのようです。

第三に、どうして日本人が「空気」によって意思決定を支配されているかというと、日本人は言語を用いて未来を論理的に構成することができないからだそうです。
どういうことかというと、多神教の日本人は、論理的に矛盾する物事も「それはそれ、これはこれ」として受け入れてしまうため、物事を臨在感的に把握することはできても、言語を用いて未来を論理的に構成することができないのだそうです。

正直、私にはちょっと難しかったので、著者の主張をどれほど理解できたのかは我ながら疑問です。
ただ、小泉政権以降の政治状況等をみても、日本は依然として「空気」に支配されていると思いますし、それではいけないと思います。そういうことを深く考えさせられた1冊です。ぜひ一読をお勧めします(そして私に分かりやすく説明してください....)。
[ 2009/10/26 01:32 ] 読書感想文 | TB(0) | CM(4)

ご紹介の本は読んでいませんが、同じ著者の「日本資本主義の精神」って本がおもしろかったです。こっちも楽しめると思います。
[ 2009/10/26 09:07 ] [ 編集 ]

面白そう

「空気」って日本人独特の感覚なんでしょうね。
現代にはそぐわない感覚なのかもしれないのに、いまだに僕らの意思決定をガッチリ縛る拘束力があるのは、なんとも根が深い。
近々読んでみたいと思います。
[ 2009/11/04 22:32 ] [ 編集 ]

空気

はじめまして。

よく見かける本だったのですが、
こんなに古い本だったのですね。

面白そうです。
[ 2010/01/31 15:27 ] [ 編集 ]

返信が遅くなりましてどうもすみません。

> まろさん
御紹介の本も読んでみたいと思います。
御紹介ありがとうございました。

>togawaさん、あつまろさん
考えさせられる本ですので、ぜひ読んでみてください。
面白いですよ。
[ 2010/04/26 00:35 ] [ 編集 ]

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