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私が子ども手当を支持しない2つの理由

私は次の理由により、子ども手当を支持していません。
1.見合った財源が確保されていないこと
2.「子育て支援」が目的なのに使途が子育てに限定されていないこと

 子ども手当なんて選挙目当てのばらまき政策に過ぎないと考えていましたが、ツイッターでのやりとりをきっかけに少し調べてみたところ、評論家の山崎元氏等、子ども手当を支持されている方も少なくないようです。
 そこで、私はどうして上記1と2を問題と考えるのかを改めて整理してみました。

1.財源がない

 私が子ども手当に反対する理由の一つは、財源がないことです。
 昨年の衆院選挙の際、民主党は、一般会計と特別会計の総計約200兆円のムダをなくしてマニフェストの主要施策の実現に必要な財源を捻出すると主張していました。
 ところが、フタをあけてみれば、一般会計は歳出総額が過去最大の約92兆円で、歳入では戦後初めて国債収入が租税収入を上回るという、ムダの削減とはほど遠い内容でした(平成22年度一般会計予算の概要国債残高の推移)。
 また、昨年の衆院選挙の際、民主党は、今後4年間は消費税増税の議論すらしないと言っていたにもかかわらず、先月就任した菅首相は、就任早々、消費税を10%程度まで引き上げる方針を示しました。

 個人的には、子ども手当であれ何であれ、一般会計や特別会計の見直しで財源を確保して実施するなら賛成します。しかし、昨年の衆院選挙の際に主張していたこととの整合性という観点からも、日本の財政・経済状況の観点からも、国債を発行したり増税をしてまで実施する必要があるとは思えないのです。

 国債金利が依然として低水準であることを理由として、国債を発行して子ども手当の財源とすることに肯定的な意見もあるようです。単年度限りの事業であればそうした考え方もあり得るのでしょうが、今後続けていく予定の事業の財源として当初から国債を想定するというのは、かなり無責任のような気がします。


2.「子育て支援」が目的なのに使途が子育てに限定されていないこと

私が子ども手当を支持しないもう一つの理由は、「子育て支援」が目的なのに使途が子育てに限定されていないことです。
 子ども手当は現金給付です。建前上は子育てのために使うことが要請されているものの(子ども手当法第2条)、実際の使途は受給者の自由です。

 私も2児の親ですが、確かに子育てにはカネがかかるので、国から現金をもらえるのは正直に言って嬉しいです。しかし、実際に子育てをしている親が求めているのは自由に使える現金なのでしょうか。カネをもらっても保育園に空きがなければ子どもを預けられませんし、夜間や週末でもしっかり対応してくれる医療機関がなければ医者にかかれません。そういった環境整備こそ国の責任で行うべき事柄だと思います。

 子育てしている親にわざわざカネを配るくらいなら、そもそも子育てしている親からはカネを取らなければいいだけの話。たとえば扶養控除を税額控除にするとか、医療保険や厚生年金の掛金を軽減するとか、いくらでもやり方はありそうです。

 こうしたことに加え、子ども手当の金額が月額26,000円に決まった背景や、初回の支給が参院選挙の直前となったことなども考えると、子ども手当は有権者に現金を配るための手段であって、子育て支援なんて単なる名目だと思えてしまうのです。

 こども手当を支持する理由として、所得再分配効果や世代間格差解消効果を指摘される方もいます。しかし、所得再分配を目的とするなら所得制限は必要でしたでしょうし、世代間格差解消を目的とするなら給付対象を子育て世帯に限定する必要はありません。そうした効果も多少はあるのでしょうが、それはあくまで副次的なもので、子ども手当が子育て支援という目的に照らして効果的かどうかとは違う話だと思います。

 また、保育所整備等は地域の実情に応じて別途行えばよいので、子ども手当の可否とは別問題という指摘もありますが、周知のとおり国の財政状況はきわめて厳しいので、より優先度の高いものから実施していくことが必要だと思います。

 子ども手当に肯定的な方の中には、ベーシックインカムを支持している方が少なくないようです。個人的には、ベーシックインカムは勤労意欲を失わせる有害な制度だと考えているので、こうした考え方の違いも子ども手当に対する評価の違いと関係あるのかもしれません。


(参考記事・サイト等)
・子ども手当について(厚生労働省Webサイト)

・民主党マニフェスト2009

・民主党政策集INDEX2009(子ども・男女共同参画)
・山崎元「子ども手当は脱官僚の試金石」
・山崎元「民主党の子ども手当とベーシックインカム」

・巷間哲学者の部屋「ベーシックインカム実現は子ども手当から」

[ 2010/07/10 22:21 ] 政治経済 | TB(0) | CM(3)

2009年の対外資産負債残高・国際収支統計

先日の報道によると,2009年末(暦年)の対外純資産は過去最高の266兆円で、19年で世界一とのこと。
対外純資産はプラスの方がいいんだろうけど(まあマイナスなら資産といわないけど)、19年連続世界一というのが良いことなのかどうか分からなかったので、ちょっと勉強してみた。

1.対外債権債務残高と国際収支統計

財務省HP
によると、ある時点で居住者が保有する海外の金融資産(対外資産)と、非居住者が保有する本邦の金 融資産(対外負債)の残高を記録した「対外資産負債残高」という統計があり、対外資産から対外負債を差し引いた金額がプラスの計数の場合を対外純資産というそうです。
対外純資産残高は、毎年末時点のものが日本銀行HPに掲載されています。先日の報道はこの公表を受けたものですね。

そして、これと密接に関係する統計として、一定の期間における、居住者と非居住者との間で行ったあらゆる対外経済取引(フロー)を体系的に記録した「国際収支統計」という統計があるそうです。両者はいわばフローとストックの関係にあり、基本的には、ある年末の対外純資産額(対外純負債額)は、前年末の残高に経常収支の黒字額(赤字額)を加えた金額と一致することになります。
国際収支統計は、毎年末時点のものと毎年度末時点のものが財務省HPに掲載されています。5月上旬に、2009年度の経常収支が大幅改善したという報道がありましたが、こちらの報道はその頃に公表された年度末時点の国際収支統計を受けたものです。

フローとストックの関係でいくと、国際収支統計だけ年末と年度末の2種類の統計を採るのかよく分かりません。
何か意味があるのでしょうか。

2.対外債権債務残高の概要

対外資産負債残高の詳細は日本銀行HPに掲載されています。
対外資産・対外債務の内訳がグラフで表されていますが、直接投資より証券投資の方が全然比率が高くてびっくり。
国際的にそうなのか,日本の特徴なのかはよく分かりません。

20100529_01

諸外国との比較で気になったのは、日本の直接投資が低いことです。
直接投資の名目GDP比率は、対外投資、対内投資とも諸外国よりもかなり低い水準です。
特に対内直接投資の名目GDP比率は、諸外国が約19~ 47%に対し、日本はたったの3%。
日本が外国投資の受入に消極的なのか、外国にとって日本に直接投資する魅力がないのかは分かりません(たぶん後者だと思います)が、いずれにしても大きな問題だと思います。

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対外資産債務残高はIMFの基準に沿って作成されているようなので、各国の滞在債権債務残高の詳細を比較すれば、日本の問題点はきっとあぶりだされてくるはず。
でも、そのための手間と時間、なにより語学力が不足しているので今回は諦めました(笑)

もしかしたら、対外純資産が多い理由は、国内に投資機会が乏しいせいで国内の資金が海外流出し、海外からの資金流入も低調なため、というお粗末な理由なのかもしれません。
国際収支統計をみても輸出総額・輸入総額とも年々減少しているので(円ベースでみた場合)、日本の経済力が少しずつ低下しているのかな、なんて考えてしまいました。

(注)本文中の表・グラフは「2009年末の本邦対外資産負債残高」(日本銀行国際局・PDF)から引用しました。
[ 2010/05/29 22:01 ] 政治経済 | TB(0) | CM(0)